【企業法務コラム】 「取適法」の適用対象事業者

第1回 「取適法」の適用対象事業者

【質問】

弊社は、顧客から委託を受けてポスターデザイン等の制作業務を行っており、その一部を外部のデザイン業者にも再委託しています。弊社の資本金は1000万円のため、これまで外部のデザイン業者への委託について下請法は適用されないと考えていました。しかし、下請法の改正(取適法)により、弊社による外部のデザイン業者への委託についても取適法の適用があると聞きました。弊社で常時使用する従業員数は120人です。

この場合、取適法は適用されるのでしょうか。

【回答】

「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(以下、本コラムでは「取適法」といいます。)の適用の対象となる委託取引の範囲は、①取引の内容と、②取引当事者の資本金若しくは出資の総額(資本金基準)又は常時使用する従業員数(従業員基準)により画定されています。

ポスターデザインの制作業務は、「取適法」の「情報成果物作成委託」に該当します。貴社の資本金は1000万円であるため、資本金基準によると「取適法」の「委託事業者」に該当しませんが、常時使用する従業員数が100人を超えているため、従業員基準により「委託事業者」に該当します。

そのため、委託先である外部のデザイン業者が個人である場合又は常時使用する従業員数が100人以下の法人である場合は、当該委託先は取適法の「中小受託事業者」に該当し、貴社と当該取引先との取引には取適法が適用されます。

1. 「取適法」が適用される委託取引と取引当事者

「取適法」の適用の対象となる委託取引の範囲は、①取引の内容と、②取引当事者の資本金若しくは出資の総額(資本金基準)又は常時使用する従業員数(従業員基準)により画定されています。

「取適法」が適用される委託取引の範囲は、委託取引の内容に応じて次の2つのパターンに区分されます。

【対象取引‐その1】

「取適法」は、次の業務の委託取引が下記表の事業者の間で行われる場合に適用されます。

  • 物品の製造委託、修理委託及び特定運送委託取引
  • プログラムの作成を委託する情報成果物作成委託取引
  • 運送、物品の倉庫における保管又は情報処理の提供を委託する役務提供委託取引
「委託事業者」 「中小受託事業者」
 ①資本金又は出資の総額が3億円を超える法人事業者個人事業者又は資本金若しくは出資の総額が3億円以下の法人事業者
 ②資本金又は出資の総額が1000万円を超え、3億円以下の法人事業者個人事業者又は資本金若しくは出資の総額が1000万円以下の法人事業者
 ③常時使用する従業員が300人を超える法人事業者常時使用する従業員が300人以下の個人事業者又は法人事業者

【対象取引‐その2】

「取適法」は、また、次の業務の委託取引が下記表の事業者間で行われる場合にも適用されます。

  • プログラム以外の情報成果物の作成を委託する情報成果物作成委託取引
  • 運送、物品の倉庫における保管及び情報処理以外の役務の提供を委託する役務提供委託取引
「委託事業者」 「中小受託事業者」
 ①資本金又は出資の総額が5000万円を超える法人事業者個人事業者又は資本金若しくは出資の総額が5000万円以下の法人事業者
 ②資本金又は出資の総額が1000万円を超え、5000万円以下の法人事業者個人事業者又は資本金若しくは出資の総額が1000万円以下の法人事業者
 ③常時使用する従業員が100人を超える法人事業者常時使用する従業員が100人以下の個人事業者又は法人事業者

従業員基準(上記③及び⑥の基準)は、資本金基準(上記①、②、④及び⑤の基準)が適用されない場合に適用されます。このため、プログラムの作成以外の情報成果物の作成委託については、資本金が1000万円以下であっても、常時使用する従業員が100人を超える法人事業者の場合には、取引先(受託者)の常時使用する従業員が100人以下の法人事業者や個人事業者のときは「取適法」が適用されます。

「常時使用する従業員」とは、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト等、「労働基準法」が適用される労働者をいいます。ただし、日々雇い入れられる者は、1か月を超えて引き続き使用される場合でなければ含まれません。

「常時使用する従業員の数」は、「取適法」の適用対象取引を委託した時点を基準として判断されます。「取適法」の適用対象取引を委託した時点で従業員基準を満たしている場合には、その後の従業員数の変動の有無にかかわらず、「取適法」の適用対象となります。他方、「取適法」の適用対象取引を委託した時点で従業員基準を満たしてない場合には、その後に従業員数が増えて従業員基準を満たす状況となったとしても、「取適法」の適用対象とはなりません。

2. 「常時使用する従業員の数」の確認方法

従業員基準が適用される場合、「委託事業者」は、取引先(受託者)の「常時使用する従業員の数」を確認する必要があります。ただ、資本金とは異なり、取引先の「常時使用する従業員の数」については、情報が公開されているわけではありません。

公正取引委員会・中小企業庁が公表する「中小受託取引適正化法テキスト」では、「委託事業者」において、取引先(中小受託事業者)の「常時使用する従業員の数」を確認する義務はないとされ、賃金台帳の閲覧等は必須ではないとされています。しかし、後日、取引先の「常時使用する従業員の数」が想定より少なく、取引先が「中小受託事業者」に該当していることが判明した場合、既に行った取引について「取適法」違反が問われる可能性があります。

したがって、取引先(受託者)に「取適法」の適用対象取引を委託する場合において、従業員基準により「委託事業者」に該当するときは、取引先(受託者)が「常時使用する従業員の数」を書面等の記録に残る形式で確認すべきです。

【執筆者】
弁護士 渡部祐大

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